紺屋の白袴
紺屋の白袴(こうやのしろばかま)と言うことわざがあるが、
人様の事では、あれやこれやと相談に乗っても、
母親の介護の事は、
まだまだ、大丈夫と後回しになっていた。
春の病気も治癒し、
お蔭さまで元気になった母親は、
病み上がりからのびきった髪を気にし、
使うことが無かったタクシーのチケットを利用し、
美容室へ出かけさっぱりしたと喜んでいたが、
新たな行動はそこでとどまらず、
年齢と共に少なくなったわずかの友人も高齢者下宿へ入居となり
日中は一人でいる事が多く、
娘二人は、他人様の世話に飛び回る姿にしびれを切らしたのか、
自ら湧別の役場へ電話をかけ
「このままなら物忘れが進みそう
自分が活性するところへ入れて欲しい」と希望し
先日より週に1回デイサービスへ通う事となった。
回数を重ねるうちに「楽しい」との発言も飛び出し
「行動力はすごい!さすが母親」と
昔から普通の母親ではない要素は十分もちえていたが、
間もなく90才と言う年齢と行動力は
十分に娘二人を感服させた。
母親との数時間のドライブも終わり
バックミラーに映る小さな体で大きく手を振る姿に
窓から手旗信号の様に振りかえし
小さな町ならではの配慮もありがたいと
緑濃い五鹿山の景色と
友人が住んでいた家を懐かしく感謝の気持ちで故郷の回想に入らせていただき帰路に就いた。