Fさんの「おはぎがたべたーい!」の一言で次の日のおやつは、おはぎにな りました。

 季節が食べ物を思い出させるのでしょうか。
長年、体に染みこんポジティブな感覚は、季節と共に忘れられていた過去を思い出し食欲にも繋がりました。
 遠慮のない環境の中でこそ伝えることの出来る関係性、高齢者の多くの人は自分も含めて「食べ物は人生最後の希望」と日々伝えてきていたお陰で、職員の反応も早いのです。
 暖冬からか、一足早い気分の低下の中で低迷しているMさんに、職員が恐る恐るおはぎつくりをもちかけました。
「いやーできるだろうかー」と、すべて否定気味のMさんでしたが、もち米と、うるち米のあわせた半殺しに始まり、丁寧にまるめ、あんをつける頃には笑顔になっていました。
低下するとすべて遠慮がちになり、水分も思うようにとることが出来ません。
一度飲んでいただいた飲み物や、ヤクルトをそっともう一度セットする事でうまく飲んでいただけることがあります。声は、聞こえるか聞こえないかの大きさです。
介護はだんだん、職人技になってきました。
 自分の施設の利用者を知っているのは、自分であり、まだ良く知らないというのであれば、その人になりきる気持ちを週に何度か体験することで、その人に近づくことができます。たくさんの研修は、介護者の基礎をつくるものであり、それをいかに熟成し発酵させるかは、センスでもあり気づきでもあります。
一つの学びから多くの知恵をいただいているのです。

 利用者様の残りの人生を、お預かりしているという思いがあれば、なぜ自分がそこの施設にいるのか、なぜ在宅でお世話をさせていただいているのか、現世では不明な事が少しずつ明確になってくるでしょう。
 介護にはスピリチュアルケアがある事を介護者は頭に入れることで納得する場面がたくさんあるはずです。
 私しと同様、少しだけ理解できた部長が、限られたお金の中でレジに何度も並び、せっせと、チラシを見て買い物に出かけて行きます。
買い物はスタッフを連れて半日以上かかります。
 利用者様自身が買い物をする場所が、どんどん減ってきました。
気分転換の買い物がやっとの現状です。
今日も部長は、あれもたべさせたい!これもたべさせたい!と、ちらしと一体になっています。まさに使命を感じて働かせていただいているようです。
 施設長