吉田松陰
平日に視るに非ず
士の気節(きせつ)あるは、これを平日に視るに非(あら)ず。
必ずや変に臨(のぞ)みて撓(たま)わず、死を守りて懾(おそ)れず、
乃(すなわ)ち其(そ)の気節を見るのみ。
国の定論(ていろん)あるも、亦これを無事に視(み)に非ず。
必ずや天下(てんか)潰乱(かいらん)し、
正義鬱塞(せいぎうっそく)して、乃ち其の定論を見るのみ。
安政五年七月一二日「前田手元に与ふる書」
(訳)
ある武士に気概や、節義があるかどうかは、
平穏無事な平生(へいぜい)の日に確かめられる
ことではない。
非常事態に臨んでも、気概が萎えず、
いざという際に、死を恐れないようであれば、
それを認めることができるだけである。
国家に正しい方針があるかどうかも、
平穏無事な時に確認することはできない。
世が乱れ、正しい議論などができないような状態において初めて、
国家に正しい方針があるか否かをみるだけである。
吉田松陰 一日一言
川口雅昭=編 致知出版社