満州娘の歌から、蘇る記憶と辛い戦争
スタッフの知らない歌、
幼いとき父のラジオから流れていた歌、
満州へ戦争で行ったという父
帰国してから、様々な体験を思い出し耳にしていたのだろう
何とか歌えないかとの思いから、音符を探る。
休み無く部活動に費やした時間が蘇る。
懐かしい友人と共にキーの感覚が蘇る。
利用者様の表情が変わる。
二度聞いて笑顔が出て、 三度聞いて歌詞を思い出す。
男性スタッフにも歌ってもらう。
キーが高いが裏声に一同大笑い。
当日のスタッフ全員、笑顔の中に緊張が漂う。
記憶を取り戻しながらの利用者様の思いと、スタッフの満足に歌うことができるかなと、共にリスクを背負いながら唄う歌の達成感は大きい。
♪王(ワン)さん待ってて頂戴ネ・・・ この歌詞で目が輝き手振り身振りがつき出す
息子や娘の顔も理解できなくなったTさんが四回目には口ずさんでいる。
アルツハイマー型認知症末期である。
無表情だったTさんの顔に笑顔とやすらぎと何とも言えない表情が宿る、しばらくするとTさんが手を合わせて歌っている。
忘れていた過去を自ら能動的に思い出すことができた喜びと辛さと共に・・
夕食後の一時の歌と笑い
共に作り出す空間である
現場は辛くて楽しい!
たくさんの思いでの瞬間に立ち会うことができるのだから・・・
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私しゃ十六 満州娘
春よ三月雪どけに
迎春花(インチュンホァ)が咲いたなら
お嫁にゆきます隣村
王(ワン)さん待ってて頂戴ネ
鉦や太鼓に送られながら
花の馬車(マーチョ)に揺られてく
恥しいやら、嬉しやら
お嫁にゆく日の夢ばかり
王さん待ってて頂戴ネ