米百俵 小林虎次郎
グループホームにおいて米百俵、小林虎次郎の本を読ませていただいた。
強制することなく朗読をしていく中で、
少し体調を崩しているHさんも自室から出てきて、輪に参加する。
「今日は、何の話をしているのか・・」と興味深い表情から読み取ることが出来る。
互いにつくり合う時間の提供は、ストーリーの世界に入っている認知症の人々に、
どこかで若い頃聞いたとがある話がつながり新たな主導のストーリーの世界をつくり出す。
また、入居間もないSさんは、いつもこの時間「おしっこ・おしっこ・・」と排泄が急激に気になる時間でもあり何度行っても排泄はない。
そのような時間を新たな時間の提供にしようとした試みもある。
Sさんは、じーっと聞いており「調子がよさそう!」とわくわくしながら進めていると、
「なんだか、わからんけど、もう少しきいてみるわー」と一オクターブ高く細い優しい声でそばに寄り添っている介護者に語りかけている。
介護者のうなずく動作に安堵し、じーっと聞いている。
思いやりの心、懸命に語っている人に申し訳ないと思う心が動いたのか・・
その心に触れ、Sさんの気持ちに報おうと朗読する言葉に力が入る。
すると、その3人横の脳血管性認知症を患うTさんとUさんが、しっかりと話のすじを組み立て涙をすすっている。
その雰囲気は、なんだか、おごそかで尋常高等小学校の先生になったような雰囲気と化している。
あまりの厳かな雰囲気が続き、読み手の方が間が持たなくなり降参。
次回の話の続きを約束し、みなさんの「ありがとう、ありがとう」という感謝の言葉をいただきつつ、心構えの大事さを痛感する事が出来たのは宝であった。
しかしSさんの排泄の訴えが一言もなかったことは、相手を思いやる心が主導となり周辺症状に至らなかったことは幸いである。