介護の失敗から学びの発信
若年生認知症
「若年生認知症です」と自ら本人自身が語ることの出来る皆さんが多くなっていることは、とても喜ばしい事だと思うと同時に、どんどん意見を世の中に発信していただきたいと思う。
しかし、若年生認知症を患っている人の中には、診断を受けることで勤め先を失うことを恐れたり「変だ」と本人や家族が思っていても様々の理由により受診が遅くなり、仕事・家庭でどうにもならなくなり、せっぱ詰まった受診に至るケースが多い。
理解していたつもりで介護していた反省を込めて介護者の配慮の大事さ(目線の置き方や、立ち方、話し方)が必須である事を本人から体全身を駆使して教えていただいたことがあるので、あえて発信したい。
いつもの環境から、大勢の環境の中へお連れする時には、人も含めた環境の違いから、かなりの緊張の場面にいることも忘れてはいけない。
1枚の歌詞カードが、彼の前に届くのが一番最後になってしまった場面があったが、若年生認知症が進行した彼の場合、思うように言葉を届けることが出来ず急に大声を出し怒りの表情をあらわにしたのである。
彼をいつも知らない介護者であれば、暴言・大声のある利用者とレッテルを貼られる事と思う。
しかし、この場面での変化は、介護者の配慮が欠けていた事が原因であって彼のせいではないのである。
大勢の中に入ることが悪いことではなく、大勢の中へ入りたいその人を介護者としてプロとして事前の配慮が欠けていた事を彼から教えていただいたのである。
私自身その場面に遭遇したのでスタッフに瞬時に伝え、彼に心からスタッフ共々誤らせていただいた。彼の興奮は、しばらくおさまらなかったが心が通じたのかしばらくして体全身の力を振り絞りながら歌を唄っている彼がいた。
若年生認知症を患っても、上手く連携できずに辛い思いのままサービス利用になる方が多い事や介護者としての配慮が大切なことを、介護の失敗からの学びを介護者として伝えていきたい。
若年生認知症を患う本人や在宅で中心となって介護をしているご家族への配慮や支援の在り方により在宅介護の継続が決まると言っても過言ではないと思う。
改めて早期発見、早期治療、介護者間のネットワークの大切さが最後までその人らしく暮らせるキーワードであることを頭に入れたい。
施設長