コラムが届きました。コラム.35
▼全盲を克服して、精神科医になった大里晃弘さんのお話です。
大里先生は、大学の頃までは右目に拡大読書鏡を使えばわずかに見えていましたが、卒業してからは全盲になりました。
大学在学中は医師を志望していましたが『視覚障害者は医師になれない』という法律に阻まれ、鍼灸師になりました。
2001年に法律改正があり、取得できるようになりました。でもその時は40歳を過ぎていました。
それから猛勉強を開始して精神科医になったそうです。
▼精神科では大きく
①アルツハイマーやてんかんなどの脳器質性疾患。
②統合失調症やうつ病などの内因性精神病。
③人格障害やPTSDなどの都市型精神病の三つに分けて診療に当たっています。
全盲である大里さんの診療法は、傾聴が中心で、患者さんの声の変化に意識を集中して精神症状の変化を判断しています。
表情や服装も判断材料として重要なので周りのナースから聞き取ります。
脳のCT画像や脳波の情報は自分で診ることができないので仲間のドクターに診てもらって判断します。
この方法で大半の診察が可能ですが限界もあり、統合失調症で幻覚や幻聴があって会話が取れないような患者さんの場合は傾聴による診断ができないことになるので、十分に診ることができません。
▼精神医学における治療の考え方は、般若心経の一節、色即是空・空即是色と同じです。色とは形のあるもの、空とは形がないものを指します。
つまり、生物学的な治療と心理学的な治療に区分して治療にあたっています。
▼今日医療現場には、視覚に障害を持つドクター・ナース・薬剤師・精神保健福祉士・カウンセラーなど多くの仲間がいます。
そこで『ゆいまーるの会』という「視覚障害を持つ医療従事者の会」を立ち上げて、情報を共有し、研究・研鑽を図りながら進めています。
福祉活動専門員川窪政俊