最後の時期に 選ばれた者は 患者のセラピストとなり
グループホームにおいても 看取りを何度かさせていただいているが
その経緯は 老健時代が 皮切りのような気がする
家族と 余命幾ばくも無い人との
最後の とき の 互いの 心の整理をどのように支援ができるだろうかと
事務所の人々を含め 現場の人々と話し合い
当日は 副理事長も 同伴し 施設全体で実行に至った経緯がある
毎日のように施設へ面会にいらしていた 家族であり
話もできずに 表情も変わらないのだけれど 身内だけに伝わる何かがあった
うちは 長男ではないけど いいばあちゃんでね 縁があったんだろうね・・と
最後の場面が近いことを何度も何度も話し合う あいだに
笑顔で話す お嫁さんの 言葉から 何かができないだろうかと話し合い
車で5分ほどの自宅へほんのわずかの時間であったが
車中では
家族が本人に語りかける場面、
それに応えようと お嫁さんに 体全身を振りしぼり 気をおくる表情
後の支援においても いつも浮かんでくる場面である
15分ほどかけ ゆっくり ゆっくり 帰宅することができた
自宅では いつも寝ていた場所に 体を休め
家族は 介護していた日々を思い出すように
言葉を発せない本人と会話をしていた
家族ならではの 会話であるかのように 車中とは違い 本人も目を大きくあけ
言葉にならない言葉を 送っていた
精神科医 キューブラー ロス の著書にも描かれているが
死へといたる人間の心の動きから
その場面で かかわることへの深さが より鮮明に思い知らされる
最後の時期に 選ばれた者は 患者のセラピストとなり
言葉をこえる 沈黙の中で臨死患者をみとるだけの強さと
愛情を持った人は 死の瞬間とは恐ろしいものでも
苦痛に満ちたものでもなく
身体機能の穏やかな 停止であることがわかるという
人間の穏やかな死は 流れ星のようであり
一瞬明るく輝いたかと思うと無限の夜空に消えていく
人類という 大きな海の中でも一人 ひとりが唯一無二の存在であり
その存在は有限で寿命には限りがあり
人類の歴史という織物の中に自分の人生を織り込んでいくと・・
中央文庫 死ぬ瞬間 E・キュプラー・ロス より