認知症と、うつ病を併せ持つMさんへの対応は、やっぱり心でした。
開設当時から入居中のMさんは、四季折々にうつ病が強く現れます。
昨日も2日間続けて気分が沈みがちで、お部屋での食事となりました。
スタッフが何かと気にかけ、それとなく自室での水分摂取や食事摂取を勧めていましたが、
D3シート(センター方式)に記載されている水分量が極度に少ないのです。
仕事がら浮かんでくるのは、バイタル・便秘・睡眠・服薬・環境・・・と分析が脳裏で展開されます。
何とか好きなヤクルトだけでもと、布団で休んでいるMさんに話しかけるのですが一向に進みません。
ふと、考えてみるMさんの過去は、幼いころなくした母親への思いが強く現れ時には小学校低学年まで返ることがあります。
会議終了後も心配になり、Mさんの部屋を訪ねました。
Mさんは「何もしたくない。何にもいらない」・・とかたくなに心を閉ざしている様子でした。
寝ているMさんの手を握りMさんの好きな明るい歌を4曲ほど歌うとMさんは3曲目から一緒に口ずさみ始めました。
「Mさんの心に届け!」とばかりにMさんとの歌謡ショーが始まりました。「こまどり姉妹みたいだね」と・・・
口には出さなくても水分・・水分との一方的な思いを心で詫びながら
「Mさん、ありがとう。一緒に歌ってくれてありがとう。いつも心配しているから・・Mさんは大事な人だから・・・」と話すと、
「ありがとう、うれしいよ」と・・・
「そこに置いたら”ほこり”入るよね」・・・とMさん、
「うん、飲んでみるかい・・・」
何度勧めても起き上がることのなかったMさんは、すっと手を突いて起き上がり、ぐいぐいと飲み「あら、おいしいわ」と全部飲みほしました。
大事なことをMさんは気づかせてれました。
誰もが知っている、そんなことは、わかっているよと言う、あたりまえの
相手の心に寄り添う大事さでした。
自分が幼い頃に祖母や両親が病気のときに行なってくれたこと、
「かりんとう」が大好きで「かりんとう食べると治るかもしれない」と訴えると、祖母は隣の深坂商店に行き、
せっせと、孫の為に買ってきてくれたこと・・
本当に病気だったのと、今思うと?ですが、
幼くても心が疲れていたのかもしれません。
そのような祖母や両親への感謝と重なりながら気づいた介護は無償の愛が一番の特効薬でした。